「きっと僕も思い出す過去があるんだ!」

 元の位置に戻ってきた大きな鳥は、

「思い出さないのか」

 と低い声で喋る。

「僕だって、僕だって思い出したいんだ!」

 頭を抱えて必死に思考を巡らせる風紀を後目に『仕方がないな』と再び雷志ら三人の下へ移動していく。

 その羽が大きく震えたかと思うと、雷志たちの身体から少しだけ血が噴き出した。

「かまいたち…」

 風稀はそれを見て聞いたこともなかったはずの言葉を思い出した。

「少し、少し思い出したけど、駄目だ。まだ駄目なんだ」

 頭を抱えたままぶつぶつと呟く風稀だが、そんなことには構いもせず、大きな鳥は再び羽を広く拡げた。

「駄目! それは駄目なんだよ!!」

 焦った風稀はとっさに取りめがけて走り込む。

「我が内に潜む虎の御霊よ、我に力を与えたまえ!」

 風稀の全身から浮かび上がった光は形を成し、大きな虎となり颯爽と走り抜ける。

 そのまま鳥に覆いかぶさりその喉元に食らいついた。