旅館までの道中、もっぱら先程の出来事の話で持ちきりだった。

「で、結局思い出したことはあるのか?」

 雷志の質問に氷斗が解ったことはあると言う。

「俺様とお前ら四人で旅をしていたんだよ。何かのために。何かをしに行くために。
 その途中で出会ったのが、さっきの人魚だ。

 今回と同じように、他三人は沼の水を飲んで死にそうになってた。
 でも、俺様は大地の力があるから、体に毒素が入っても支障がでない。

 そして一人で戦って、沼からあいつを引き上げて、腰から下を切り落とした。
 人間になったあいつとはそれ以来会ってなかった。

 何で俺様はこの記憶を覚えていなかったんだ?四人で、そう、旅に出ていたんだよ。
 でも、それだけだ…。お前らとどうやって出会ったのかとか全然思い出せん。どうなってるんだ…?」

 旅館へ戻り、宿泊代を支払う。
 払い終わるのを待ってる間も、氷斗の頭の中は中途半端な記憶しかなく、整理するにもできない状態で、項垂れるしかないようだ。

 そして新たな問題も浮上する。
 この後はどこに行けばいいのか。

「今回は氷斗と関わりのある出会いがありましたので、他のメンバーの出会いを探すのが当面の目標になりそうですね。」

 火栄の言葉に頷きながらも、どこに出会いがあるのかが解らなければ、移動のしようもない。

 どこに目処をつけて出発するかを決めればいいのだが、目処が立たない限りは悩むだけになってしまう。

「あ、あの人たちそうじゃないかしら?」

 町中から聞こえてきたのは、女将さんのような声。