やっと開いた目で、青年は辺りを見回した。70年代の洋画に出てきそうな、木造の酒場。

 カウンターや窓辺等には小さな木製の飾り物が並べられている、落ち着いた雰囲気の中に小人やウサギの可愛らしさがマッチしている。

 店内には、あちらこちらで乾杯の音頭が響いて鳴り止まないほどに盛り上がっていた。

 タキシード姿の男が、あきれた表情で彼の顔を覗く。

「おいおい、だいじょぶかぁ? 呑めねえのに、目一杯酒をかっくらってたからなぁ。もう少し休んでからでもいいけど、ちゃんと帰れよ」

 それからしばらくして青年は少し落ち着いたのか、右手で頭を抑えながらも座っていた椅子の背もたれに体重を預ける。
 陽気に騒ぐ他の客の姿が、やっと視界に入ってきたようだ。

「……俺…」

 視点の定まらない目で、辺りを見回す青年。

「おいおい、ホントに大丈夫か? 悪いけど店では吐くなよ」

 タキシード姿の男は青年の肩を軽く叩き、きびすを返して店のカウンターへ歩き出した。


「ここは、何処だ…?」


 右手で後頭部を掻きむしりながら喋る青年に店中の視線が集中する。そして、物音一つしなくなった。