確実にでたらめだと思っていた『授かり人』の話。

 しかし、雷志も風稀も目の前にいる小さな妖精を見てしまったからには、実際の話だと認めざるを得なかった。

 記憶を消され、固定観念や先入観の無い状態であれば、尚更安易に認めることになるのは明白だ。


「おれは、火栄【かえい】と言います。鳥茄【ちょうか】火栄です。そしてあちらは、離木 氷斗【りもく ひょうと】です。」


 雷志と風稀は、風稀が寝ていたベッドに腰掛け、目の前で浮遊している30センチほどの人を凝視し、現実に起きていることだと自分に言い聞かせようと険しい表情をしている。

「おいおい」

 しびれを切らしたように、氷斗が二人の前で両腕を広げた。

「俺様がこれからおまえ達を案内するんだから、さっさと準備しろよな」

 火栄が氷斗をなだめて、落ち着かせる。

「氷斗、『授かり人』様ですよ。ちゃんと敬意を持って接しないと駄目じゃないですか。それに、ただ準備と言っても『授かり人』様は、何も知らないんですよ。こちらがお教えするんです」

 一体どこに連れて行くというのだろうか。記憶の無い二人は、このあたりの街並みすら解らない。

 昨日は随分と注目もされてしまった。このまま小さな彼らに引き連れられ、外を歩くとなると、格好の見せ物になってしまいそうだ。