終始にこやかに話をしている女性だが二人と二度と会うことが出来ないのも他の者達と同様。

 それを見送る前に説明しているその胸の内は、相当な涙を流していることだろう。

 これまで小さな村で、みな家族のように慕ってきていたのだから。



 二人に名前を告げ一呼吸おいた後女性は立ち上がり彼らを手招きする。

 何も解らない二人はもう、従うしかない。彼女と同様に立ち上がり、その後を付いていった。

 途中、洗面所や、台所の位置を教えてもらい、一つのドアの前で立ち止まる。

 女性がドアノブを回し、開いた隙間から手を伸ばして明かりをつけた。

 部屋の中には、シングルサイズのベッドが二台、離れて並んでいる。

「雷志と風稀が、いつこの家を旅立つのか、私には解らないの。その時まで、遠慮なく使ってちょうだい」

 二人と共に室内に入り、クローゼットや、灯りの位置等伝えて女性は部屋を出て行ってしまった。


 取り残された二人。重たい沈黙が流れる。


 雷志は入口から近い方のベッドに腰を下ろした。

 相当高級な布団なのだろうか、彼が座ると腰まで埋まるほど掛け布団が柔らかい。

 それを見た風稀は、もう一方のベッドに腰を下ろし、そのままうつ伏せに寝転んだ。