裁きを行う人として選ばれ始めたのだが、時が過ぎるごとにその呼び名も変わってきた。

 愛する者をこれ以上セイラに『裁き』で亡き者とされないよう、『セイラを裁く力を授かった者』と呼ばれるようになったのだ。

 『授かり人』が選ばれた翌年、『授かり人』の勇士を祝し祭りが行われるようになったのだが、何百年も間を空けていた場合セイラはもう裁かれたと信じる者が多く、この時代の人類に伝説を信じる者は居なかった。

 むしろ、セイラが裁かれた事を祝うという口実で酒盛りをするようになっていった。

 しかし、過去の文献を研究する者が居て『授かり人』が現れる前には前兆が必ず起こっていると、声を大にして警告していたのも確かだった。

「過去の文献を見ると、『授かり人』にしか見えない何かが、その者達を招き入れると書いてあるの。

 それがいつの出来事なのか、見えない何かとは一体何なのか、その内容は残されていないのよ」


 全く先の見えない彼女の話に飽きを感じているのか、興味がなさそうに雷志と少年は俯いている。

「あと、私が教えてあげられる情報は、あなた達二人の名前と、今夜眠る場所だけ」

 二人の向かい側に座っていた女性は、雷志の顔を見る。

「あなたの名前は雷志。『龍騎【りゅうき】 雷志』。そして…あなたの名前が、『雅虎 風稀【がとら ふうき】』」