イジワル王子に恋して

「あ…」


バイトもまったくやる気がしなかった。

もう一人のやつに全部やらせて、俺はただいらついてた。


彩子の泣き顔がずっと付きまとう。

だけど
ムカついてるのは自分自身だった。



バイトを終えた圭を更にいらつかせる。

裏に止めておいた自転車がない。


(パクられたか…)


『ちゃんと鍵かけて。』


わりぃ…彩子。

鍵かけてなかった…



彩子は
また泣くんだろうか…

それとも
もう関係ないって怒るか…?



『二人の思い出の自転車』

そう言っていた彩子の顔を思い出す。


そういえば
この自転車を買ってから
ずっと彩子は後ろにいた。

彩子の特等席!

なんて勝手に呼んでいた。

だけど
本当にあいつしか乗せてなかった。
乗せなくなかった…


かったるい朝…

毎朝、お前のくだらない話を学校まで、ずっと聞いていた…


彩子…


どんどん離れてくな…