坂井も、立ち直るのは大変だった。
仕事に復帰するのも時間がかかった。
・・・だが、会社は坂井を求めた。
戻らないわけにはいかなかった。
何より、ショックが一際大きかったのが、凛の父親だった。
今まで自分が面倒みれなかった分、後悔が襲い彼を苦しめた。
凛が亡くなった後、彼の鳴き声がいつまでも響いていた。
だが、そんな父親も49日には冷静な顔で現れた。
いや、そう努力しようとしていたのかもしれない。
俺にはできなかったが・・・。
俺は今なお、凛の死から立ち直れずにいる・・・・。
またどこかで俺に明るく、優しく話しかける凛がいるようで、
あの歌声が聞こえてきそうで・・・。
俺が凛の死を認めてしまったら、
凛がもうこの場所へ帰って来れないような気がした。
そして、凛が亡くなったあの日から、
再び俺の中で音が止まった。
凛と出会わなかった、あの時の俺に戻っていた。
