式は凛と凛のお父さんがバージンロードを歩く所から始まった。

ゆっくりと、凛がお父さんの腕につかまり赤い絨毯の上を
歩いている。

ゆっくり、ゆっくり、
親子の時間を埋めるように、俺の所まで歩いてくる・・・。

俺は牧師の前に立ち、凛を待った。

凛達が俺の所まで歩き終わると、
お父さんから、凛の手を渡された。

俺はゆっくり頷き、凛の手をとった。







・・・音楽が鳴りやむと。
牧師が誓いの言葉を口にし始めた。

「湯浅羽流。汝は結城凛を妻とし、健やかなる時も
 病める時も彼女を愛し、彼女を助け、
 生涯変わず彼女を愛し続ける事を誓いますか。」

「誓います。」

「結城凛。汝は湯浅羽流を夫とし、健やかなる時も
 病める時も彼を愛し、彼女を助け、
 生涯変わず彼を愛し続ける事を誓いますか。」

「誓い・ます。」

「では、誓いのキスを・・・。」


俺は凛に近づき、誓いのキスを交わした。


 なんだか、結婚する実感は湧かなかった。
婚姻届を出した時も、指輪を渡した時もそうだった。

これで、凛が手に入るわけでも、ずっと俺の傍にいるわけでもない。




 でも、凛が嬉しそうに笑う顔を見ると、
俺のしたことは間違いではなかったかもしれない、と思うことができた。








 だが、この時は誰もが想像しなかっただろう。

この6月3日が、誰もが忘れられない日になることを・・・。


あの誓いのキスが、最後のキスになったことを。