凛の母親も普段はとても優しい人だったのだが、病気が発症し、
歌うことができなくなった自分には魅力がないと、
無理やり離婚届を突き付けられ、離婚せざるをえなくなったそうだ。


その状態の母親の状態は坂井が見てもとても辛い状況だったらしい。




再会は上手くいった。

「凛、久しぶりだな。」

そんな父親の言葉からやり取りが始まった。

「お父・さん・・・。」

「会いに来るのが遅くなってごめんな。」

自分は悪くないのに謝る凛の父親の姿は、
どこからみても理想的で憧れる父親の姿だった。

「結婚、おめでとう。

 それが言いたくて。

 ここまで大きくなって、好きな人ができて
 恋をして・・・、
 あんなに小さかった凛がお嫁に行く日がくるなんてな。」

そう言って父親が笑った。

「今ま・で・ありが・とう・ござい・ました。」
ゆっくりと凛がお辞儀した。


「俺は何もしていないよ。
 もっと父親らしいことしたかったのにできなかった。
 
 ・・・ごめんな。」

凛の父親が泣くのを、
ぐっと堪えたのが俺にまで伝わってきた。


凛は首を横にふった。


「私を・ここ・まで育てて・くれたのは・お父・さんだよ。

 20歳・まで生・きれた。
 だから、羽・流さん・に会えた。
 
 ・・・私、歌も・歌え・たのよ。

 お母さ・んと・同じよ・うに。

 夢を・かなえる・ことが・できた。
 
 ありが・とう。感謝して・います。」