俺は驚きで声も出なかった。



「まだやりたいこと、一杯あるのに。


 お母さんと同じように歌手になる夢だってあるし、
 普通に結婚して家庭を持って、幸せに暮らしたい。
  
 そして、普通に年をとって、あの頃は若かったとか、
 楽しかったとか、辛かったとか、人生を振り返ったりして・・・、

 そんな風に普通に、皆と同じように、普通に生きていきたかったのに、

 どうして私にはそれができないの!!!
 
 本当に普通のことなのに、
  
 夢や将来のことなんて、
 誰もが願うことなのに。

 私は願ったって叶うことはないの。

 もっと生きていたいのに!なんで?!」

そういって彼女は床に泣き崩れた。

俺は傍に駆け寄って泣いている凛を抱きしめた。

「放して!!」

そう言って俺の手を払った。

「もう、ここには来ないで!!」

「えっ?」

「もう、羽流さんとの未来だってない。
 
 一緒にいると、辛いの。



 ・・・だって、羽流さんには私にはない未来があるから。

 自分にはない未来を羨ましく思ってしまうから。

 叶わない貴方との未来を夢みてしまうから。」






「こんな事を言う私が醜いのもって知ってる。」

俺はゆっくり首を横にふった。

「お願い!!もうここにはこないで。」

そう叫ぶと彼女がいきなり咳き込み始めた。