「決意は固いのね。」

「ああ。」

「じゃあ。一つだけ。言っておくわ。

私が凛に死を目の前にした気持は誰にもわからない、って言われた時、
私は凛の苦しみや怒り、恐怖をみたわ。


正直驚いた。

普段のあの子とはまるで別人だったから。

普段のあの子は自分の本当の感情を押し殺しているのよ。
誰にも知られないように。


でも、思ってしまう・・・。
抑えきれなくなってしまう。

これから未来がある人を見れば見るほど。

自分も生きたい、と。

まだ、20歳の若さで、
いつも死と隣り合わせのあの子を貴方はその闇から救いだせる?」


「わからない・・・。
正直、凛の気持ちは分かってあげたいと心から思う。

でも、それは誰にだって不可能なことだ。
坂井にだって、俺にだって。

ただ、単純に一人の男として、凛を一人の女と見て、
傍にいてやりたい。」


坂井も少し黙り、考え込んだ。

判断を誤れば、これ以上に凛を傷つけることになると思ったのだろう。


一度深く頷き、
「わかった。」
そう言って坂井は小さな住所を書いたメモを持って来た。