いつも強引な彼女だが今日は珍しくバツが悪そうに家へやって来た。

「今日は、実は・・・お願いがあってきたの。」

なにやら、込み入った用であることが彼女の表情から窺えた。




「どうした?俺に頼みなんて珍しいな。」

「・・・。」
しばし沈黙が続いた。

そして、次の瞬間、思い切ったように俺にこう言った。


「実は、貴方の部屋に私の妹を住まわせてほしいの。」

「はっ?」
頭の中にクエッションマークが並んだ。
それにしても・・・。話が、と、唐突すぎる・・・。



「この部屋に一緒に住むって。ど、どういうことだよ?
 大体、お前に妹がいたことさえ初耳だぞ。」

あまりに突拍子もない坂井の言葉に、俺は言葉を詰まらせながら話を返した。

「私、明日からロスに新人のプロモーションに同行しなくちゃいけないの。」
坂井は言いだしにくかった事を吐き出すと、すっきりしたようで急に開き直った。

  
 まずい・・・。

俺は思った。

このままでは坂井の思う通りに事が運んでしまう。
坂井との長い付き合いでこの流れはヤバいと学習した。
なんとしてでも阻止しなくては。




 俺は最もらしい言葉をぶつけて説得しようと考えた。

「いや、お前がプロモーションに行くのはいいけど、
 それとこれとは別問題だろ。

 大体なんで、よりにもよって俺ん家なんだ。」


「・・・。」

黙って何食わぬ顔で俺を見ている。


俺は続けた。

「お前の妹っていうくらいだからもう成人してる大人だろ。
お前の部屋に置いとけばいいじゃないか。


それにわざわざ男の俺の部屋じゃなくても、他に女友達とかいるだろう・・・。」




・・・よしっ、言ってやった。