「あの子、出て行ったのね。」
俺は何も反応しなかった。

「ついさっき、凛から連絡があったわ。」
俺は疲れていた体を起こし、驚きのあまり、坂井に駆け寄った。

「凛は今どこに?!」
俺はすごい勢いで坂井に聞いた。

「それは言えないの。」

「えっ?」

「凛からの手紙読んだでしょう。そこに書いてあったとおりよ。」

「・・・うそだろ?」

「えっ?」

「凛が病気なんて・・・。
死ぬなんて!!うそだろ・・・。」

俺は坂井の肩を揺らし、叫んだ。嘘だと信じたかった。
愛する彼女の死を認めることはできなかった。



だが、泣き叫ぶ俺をよそに、否定しない坂井が、凛の病気を決定づけた。





しばらくすると、落ち着いてきた俺に、坂井が話始めた。

「凛から聞いたわ。ここでの生活のこと・・・。
 ありがとう。

電話の凛、とても生き生きしてた。
病気を宣告されてから、凛のあんな嬉しそうな声、
聞いたことなかったから。」

坂井は涙を浮かべながら続けた。


「あの子言ってたわ。貴方に救われたって。
 夢を叶えてもらったって。」

「救われたのは俺の方だよ。」
俺は今までの凛との生活を思い出しながら、
気持ちを吐き出すように言った。



「曲・・・、書けたのね。」

「ああ。」



「聞かせてくれない?羽流の曲と凛の歌声・・・、聴きたい。」


坂井の声が震えている。






 





 俺は坂井にあの曲を聞かせた。