だって、この部屋には私が欲しかったものが全てつまっていたから。


もう、思い残すことはありません。


でも、安心して下さい。

私、残された人生をゆっくり、ゆっくり生きていこうと思うの。

一人で・・・。


そして羽琉さん、お願いがあるの。

決して私を探さないで。





貴方に会うと「生きたい。」と願ってしまうから。
与えられた命の時間以上に、生きることを願ってしまうから。
叶わない願いなのに・・・。






私の最初で最後のわがままを聞いてください。

お願いします。



 平成19年 4月25日 

       結城 凛」

  





 俺は凛の綺麗な字を涙で滲ませ、手紙を握りしめ部屋を飛び出した。


 走った。

 とにかくひたすら。凛を探して街中を走り回った。


俺は何もわかっていなかった。
彼女の思いを。
苦しさや行き場のない思いも。


あんなに傍にいたのに。こんなに凛を思っているのに。


俺は何もしてあげられていない。

俺は・・・。