「凛。」

「なんか、しんみりしちゃいましたね。すいません。」

凛が俺と距離を取り、5歩前を歩いた。そして振り返た。

「この公園の桜、お母さんと一度来た事があるんです。
あの時もこんな風に綺麗な桜が咲いていたな・・・。

だから、この場所、羽琉さんと一緒に来たかったんです。」

彼女はそう言い、また歩き出した。


俺は先を歩く彼女を後ろから、手を引きよせ抱きしめた。


そして、凛の思い出の桜の木の下で俺たちはキスをした。

一瞬、大きな風が吹いてピンクの花びらが舞った。










 俺は時々、寂しそうにお母さんの事を話す凛を堪らなく抱きしめたくなる。

その寂しそうな表情の凛はいつも遠い眼をしていたからだ。

一緒にいてもどこか遠い存在に感じる時があった。

まるで、手を放したら、どこかへ行ってしまいそうな。
そんな感覚にさえ襲われた。