その日の朝、公園の桜が満開になったというニュースを見た。
凛が見に行きたそうだったから、俺は公園に行こうと誘った。


彼女がこの部屋に来てから、丁度今日で2週間が経とうとしていた。



公園に行くと、出店が並んでいて家族連れで賑わっていた。
この公園は桜が有名で、見渡す限りの桜並木が道を作っていた。

俺たちはその桜並木を手を繋いで歩いた。


「羽琉さん。聞いていいですか?」

「何?」

「ずっと前から聞きたかったんですけど、
羽琉さんて、どうして作曲家になろうと思ったんですか?」

「どうしてねぇ・・・。改めて考えると・・・。」
俺は口を濁らせた。

「初めて作ったものだったからかなぁ・・・。」

「えっ?」

「俺昔から、結構何事もそつなくこなすんだけど、どれも中途半端で。
これといってやりたい事や夢中になれることはなかったんだ。

でも、高校から音楽初めて、ピアノやギターを弾くようになって、
バンドを組み始めるようになってから、曲を書き始めたんだ。

はじめは、もちろん上手くいかなかったけど、出来上がった時、
とにかく嬉しくて。俺の作った曲をバンドのメンバーも喜んでくれて・・・。
それから曲を作ることの楽しさに気付いて音大に進んだんだ。」

「羽琉さん、音楽の話している時、本当楽しそうに話しますね。」
そう言って凛が笑った。

「本当?なんか、そう言われると照れるんだけど・・・。」
また、二人で笑った。

「凛は?いつから歌い始めたの?」

「私は初めて歌ったのは3歳の時だったかな。

それから、お母さんが毎日ピアノを弾いて、
私に音楽のことを教えてくれたんです。
音符の読み方から、発声の仕方まで・・・。
絶対、凛はいい歌手になる。って言いながら楽しそうに。

お母さんが体を壊す7歳の時まで、とにかく本当に毎日、
音楽漬けの日々でした。
だから母の死以来、歌うことはほとんどなかったんです。
正直、母を思いだすことが辛い時期もあって・・・。

だから、私、またあんなに楽しく歌が歌えて嬉しくて・・・。」