レコーディングを終え、無事曲を取り終えた。

彼女の体調上、何度も録りつづけることはできなかった。
だが、録りつづける必要もなかったのだ。

収録は一度で完璧だったから・・・。




俺はふと、気になっていたことを聞いた。

「この歌詞、どんな思いで書いたの?」

俺は不思議だったのだ。
明るい彼女が死をイメージした曲を書いたことを。

「この歌詞は・・・。」
一瞬彼女が止まったようにも思えた。

「母をイメージしました。」

「お母さんを?」

「はい。」

「母が歌いたくても歌えなかった。
生きたくても生き続けることができなかった。
そんな思いを私が伝えられないかな。って。
そう、思って書きました。」

「そっか。
すごくいい曲に仕上がったよ。本当にありがとう。」

「私の方こそ。すごく楽しかったです。」

「そういえば、レコーディング中は一度も咳きこまなかったね。
大丈夫だった?
途中で区切るつもりだったのに、ごめん。
つい、俺の方が聞きいちゃって・・・。」

「大丈夫でしたよ。本当に楽しかった。」

「俺も楽しかった・・・。
こんなに音楽を楽しめたのは久しぶりだったよ。」

「やっぱり羽流さんの作る曲はすごいですね。」

「えっ?」

「喉が弱くて歌うことができなかった。
そんな私にこんな素敵な曲を歌わせてくれるなんて。
それに母が言ってた音楽の魔法を私にも感じさせてくれた。」

「音楽の魔法?」