俺は歌詞について悩んでいる彼女の姿を想像していた。

逆に困らせてしまったのではないかと・・・。少し、心配になっていた。
だが、歌詞を依頼してから彼女が困る姿は見なかった。

 むしろ暇さえあれば俺の曲を聴き、微笑みながら
メロディを口ずさむ彼女が印象的だった。

そして彼女は俺の前では決して歌詞を考える姿を見せなかった。

だから俺には、彼女が純粋に曲を楽しんでいるようにしか、
見えなかったもかもしれない・・・。

そんな事を考えてから歌詞が完成するまで時間は掛からなかった。

彼女が恥ずかしそうに出来上がった歌詞のメモを持ってきたのは、
それから2日後だった。

「羽琉さん。これ。一応書いてみたんですけど。」

俺は彼女の歌詞の完成の速さにとにかく驚いた。

「は、速かったね。」
俺は彼女をじっと見て驚いた顔でそう言った。

「曲を聴いてると、イメージが湧いてきたんです。
それで・・・。」


俺は歌詞に目を通し始めた。





「・・・。」

「羽琉さん?

やっぱり、素人が書いた詩じゃ駄目ですね。」
黙った俺に不安そうに彼女が言った。


「すごい・・。」

「えっ?」

「すごいよ。これ。」
俺は驚いた。

あんまりに綺麗な歌詞だったから・・・。






俺はすぐにあの曲にこの歌詞をつけてみたくなった。


そして、凛のあの声で聞いてみたくなったのだ。