「いらっしゃいませ。」

俺はブラブラと街を歩き、気がつくと、ある花屋に来ていた。
俺が入店すると、一人の店員が俺の方へ寄って来た。

「何かお探しの花はありますか?」

正直、花なんて全く知らない。
俺は自分に不似合いな場所だと思いながら周囲を見回した。

「あ、あの。花屋なんて滅多に来なくて。
プレゼントしたいんですけど、なにかお勧めはありますか?」

なんだかこの場所にいる自分が恥ずかしくなってきた。

「プレゼントですか・・・。
お花はきっと喜んでもらえると思いますよ。渡す方は女性ですか?」

「はい。まだ20なんですけど。」

「育てるのが好きな方であれば鉢植えの方が喜ばれますね。」

「鉢植えか・・・。」

「その女性のイメージを教えてもらえば、私が選ばせて頂きますが・・・。」
戸惑う俺に、その店員が花を見立ててくれるという。

「イメージね・・・。」
花を選ぶことより、この場所にいる自分が恥ずかしくて堪らなかった。
だいたい昨日会ったばかりの彼女にイメージなんて・・・思いつく方が珍しい。

そんな事を考えながら、実は既に、俺の中で凛のイメージはあった。

思えば、この時から、俺にとって凛が特別な存在であることを自覚し始めて
いたのかもしれない。


「う~ん、色で言うと、白かなぁ。繊細なイメージ・・・。」

店員はにっこりと笑い、わかりました。
と一言告げ、花を探しに行ってくれた。



・・・しばらくすると、一つの花を抱え、戻ってきた。

「この花はいかがでしょう。」
その店員は白くて可愛らしい花を俺に見せた。


白くて小さな花は彼女のイメージにぴったりだった。
「これにします。」
その花を見て彼女を思い出すほど、
彼女にぴったりの花を用意してくれた。