20歳の女と27歳の男。

付き合っていなきゃ、こんな設定はまずありえない。


毎日、朝は彼女に起こされ、温かい朝食がついてくる。
昼も夜も一緒で、並んで買い物にだって行く。

凛は毎日欠かすことなく、風呂を沸かし、洗濯ものを片付け、
掃除、食事、すべての家事を完璧にこなした。



「何か食べたいものは、ないですか?」

「いや、何でもいいよ。」

これが、1日3回、毎日繰り返された。
なんだか、夫婦みたいで、俺は笑えてきた。



 

 2日目の夕食の買い物に行った時、
いつもと同じように川沿いを、二人で歩いていた。

買い物袋が二つになると、いつも重いを俺が持って歩いた。
その日も袋が二つになり、夕焼けに映し出された小さい影と
大きな影が一つずつ袋を持って歩いていた。


公園を通りかかると、小さな子供たちが、
サッカーボールを転がして遊んでいる。

その姿を凛が眩しそうに見ていた。

しばらくすると、こっちの方へボールが転がってきた。

どうやら、一人の子供が違う方向へ蹴ってしまったらしい。

凛はそのボールを拾い、取りにきた子供へ渡した。

すると、その子供が、
「一緒にやらない?」

と、凛を誘ってきた。

その日はたまたま、ジーンズだったものの、どう見ても
その細い体は、運動向きではなかった。

だが、凛はにっこりと笑い、
「混ざってもいいの?」
と、その子供に返事をした。

そして俺の方を振り向き、まるで俺も一緒に。
と、言わんばかりに微笑んでいる。

誘われないうちに、
「俺は見てるから、行ってきな。」
と、返した。

凛は頷くと、嬉しそうに子供たちの方へ駆け寄って行った。