テーブルには湯気のたった白いご飯と黄色い卵焼き、
鮭に味噌汁まで用意されていた。

こんなちゃんとした朝ごはん本当に久しぶりだ。

「おいしそうだね。」

正直、腹は減っていなかったが、理想的な朝食と
味噌汁の湯気のたつ温かい食卓に次第に腹が空いてきた。

「本当ですか?味に自信はないんですけど。」
凛が謙遜して言った。

「いただきます。」
俺は最初に卵焼きを口に運んだ。
昔から、卵焼きは大好物だった。

母親は料理が苦手だったが、卵焼きだけは上手かった。
洋菓子みたいにふわふわして甘い卵焼き。



凛の卵焼きも甘くてどことなく母親の卵焼きに似ていた。

「う、うまい。」
思わず言葉に出た。

「本当うまいよ。」
俺は再度強調して言った。
今時の若い子には作れない味だと思った。


「良かった~。」
彼女は俺が食べているのを見て安心したようで、
自分も食べ始めた。

「坂井が言ってたよ。

凛は家事全般できるって。本当だったんだな。」


そう言って、他愛もない会話を交わしながら、
俺は久しぶりの朝食を楽しんだ。






傍から見れば、明らかに可笑しなこの二人の光景に
その時は眼をつぶっていたのかもしれない。





 この時間があまりに居心地が良くて・・・。