まぁ、いっか。
2週間くらい。

「この部屋でよければ好きに使っていいから。
もちろん、君がよければだけど・・・。」


俺は強引な姉をもった健気な妹を憐れみ、面倒をみることを決めた。


「でも・・・。」

「君のお姉さんにはよくお世話になってるんだ。
 こんな時にでも恩を返しておかないともっとすごいこと頼まれそうだしね。」

そういって俺が冗談交じりにいうと、彼女がつられて笑った。

「すいません、お世話になります。」

彼女は深々とお辞儀をした。

 そのお辞儀でさえも綺麗で、俺は違う意味で
これから無事、暮していけるのか急に不安になった。

「客室があるから案内するよ。
 
 え~と・・・、
 まだ名前聞いてなかったね。」

「あっ、紹介が遅れました。私は、凛、結城 凛と言います。」

「結城?」
坂井の妹だよな・・・。
そう俺が頭の中で考えていると、すかさず彼女が説明を付け加えた。

「あっ、姉と名字が違うのは、小さい時に両親が離婚していて。」

「離婚?」

「姉から聞いてなかったですか?」

「ああ。」

「離婚してから私は母に、姉は父に引き取られたんです。
 しばらくして姉が就職して、去年から姉のマンションに
 住まわせてもらってるんですけど・・・。

 それで名字が違うんです。」

「なんか聞いて悪かったね。」

「いえ。」

そうって彼女が笑った。

俺は話を逸らそうとい自分の話を始めた。


「俺は、坂井から聞いてると思うけど湯浅と言います。
 湯浅 羽流。羽に流れると書いてハル。」

「湯浅さんって羽流さんって言うんですか。
 素敵な名前ですね。」

「いや、全然・・・。
 昔っから女みたいな名前だってからかわれたり、
 教師からも読みにくいって言われたりで、
 
 この名前で褒められたのは初めてかも・・・。」

「すごくきれいな名前だと思います。

 羽が流れるなんて・・・。
 
 なんか、天使みたいな名前ですね。」

そう言い、笑った彼女の顔が頭から離れなかった。