それからも魔物の虐殺行為は世界各地で続いていた。

「今回はローゼンクロス、ヴェリスで同事件を確認いたしました」

「これで7件目か…そろそろ、捨て置けない状況になってきたな。私も現場に向かう」

シエルに案内を頼み、ヴェリスの現場に降りた。

「酷いな」

森の中は血の臭いで満ちていた。

魔物たちは全身を切り刻まれ、あるものは炎で焼き殺されていた。

「太刀筋は躊躇いもない。かなりの腕を持っている。魔力も相当強い」

残った炎の魔力から何かを探ろうと手をかざすと、ある顔が浮かんだ。

魔力は人それぞれ違う。

個人特有のものがある。

そしてアストレイが感じたのは、炎の様に熱く、雷のように鋭い、信念のような魔力。

忘れるはずがない。

一度は、この身に傷を思わせた魔力。

「エルナディア…」

彼女の魔力だった。

なぜ、彼女がここにいるのだろう?

シルバニアとヴェリスは遠すぎる。

「っ!」

不意に気配を感じた。

鋭くも酷く安らぐような矛盾をした気配。

敵を滅ぼす力と味方を包み込み守る力、

どちらも向けられた自分が忘れるはずがない。

アストレイは走った。