あれから数分。
捺は着替え終わった。しかし、まだ心臓がドキドキと酷く鳴っている。
『ぁ……悠斗?いるの?』
「え、あ、あぁ」
『…入っていいよ』
「ぁあ、うん…入るぞ…?」
『うん』
「ほんとに入るからな…??」
『…うん』
「ほんとのほんとに…」
『だから入れってば!!』
あまりにも悠斗がひつこく尋ねてくるから、捺は声を荒げて促した。
「し、失礼します…」
ヘラッと力無く笑う悠斗に捺はフンッと鼻を鳴らす。
「あ、あのさ…さっき…」
『あれは事故。単なる事故だから。
別に私達は兄妹だし。そーゆー感情抱いてるわけじゃないから、これは事故なの』
「ぁ……うん、そうだよな。俺達…兄妹だもんな………」
『…そうだよ』
残念そうに微笑む悠斗を横目で見ながら、捺は再び布団に潜る。
「…」
『…』
「(話題!話題を!!気まずいこの空気を終わらせたい…!!)
あー、あっ!そうだ捺!
学校楽しい??」
ニコニコと笑いながら尋ねる悠斗の言葉に、微かに捺の肩がピクリと揺れた。
それを悠斗が見過ごすはずがなかった。
「捺…?
もしかして…」
『楽しいよ。みんな優しいし。仲良いし』
悠斗の言葉を遮るかのように、キッパリと言い切る捺。
捺がキッパリと言い切るのはいつものことなのだが、悠斗はなんだか今の言い切り方はいつもと違う気がした。
(捺はいつも一人で抱えるから)