「…いつものように騒がれるのは迷惑だが、普段にぎやかな者が急に静かになられても落ち着かない」 そう言いながら、綺麗な黒髪をくしゃくしゃにしながら頭を掻いた。 …これは、照れた時の稜ちゃんの癖だ。 「分かった。 じゃあ、お昼は頼んだよ?」 「まかせろ」 微笑む稜ちゃんを、久しぶりに見た。 基本は無表情な稜ちゃんだけど、たまに見せる笑顔はふわりと優しげでいつもの涼やかな印象とは異なる。 “微笑む”というのが当てはまるような笑顔なのだ。