それくらい、がんばって
きたから。


会場で見守ることはでき
なくても、せめて見送る
くらいはしてあげたくて……
こうして、あたしも駅まで
来てるんだ。


「あぁ、行ってくる。

お前も気ぃつけて帰れよ」


爽介は、着替えなんかの
入った大きなスポーツバッグを
『よいしょっ』と抱え直し
ながら、いつもどおりの
落ち着いた口調で答える。


緊張してる様子は、
たいして見られない。


「う、うん……」


あたしが、視線をそらして
ぎこちない声で返事すると、


「何お前キンチョーしてんの?

お前があがったって
どうしようもねーだろが」


――うるさいわねっ。

そんなことわかってるけど、
しちゃうもんはしちゃうん
だからしょーがないでしょっ。


「爽介こそ、なんでそんな
落ち着いてんのよ。

ちょっとくらい緊張しないの!?」


「は? そりゃちょっとは
するけどさ。

ここまで来たら、後は
できるだけのことやるしか
ねーじゃん」