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9月最初の日曜日。


あたしは、爽介と一緒に
代々木の駅にいた。


時間はまだ、朝の9時にも
なってない。

それでもまぁ、場所が場所
だけに人は充分多いけど。


あたし達は、地上出口の
すぐ近くで、通行の邪魔に
ならないように壁際に
立って話してた。


「それじゃ……
ガンバってね、爽介」


爽介を見上げてそう言う
あたしの声の方が、緊張してる。


だって――今から爽介は、
ソレイユ杯、予選二次審査の
本番に挑むんだもの。



審査会場は、この代々木駅
から歩いてすぐの所にある、
有名な製菓の専門学校。

今あたし達がいる所からも、
ビルの一部と看板が見えてる。


パリでの本選は大々的で
オープンに行われるんだけど、
予選は、情報漏洩の予防
なんかもあって、ごく
ひっそりと内々で行われる
らしい。


だから、開催機関の関係者
以外は、たとえ出場者の
関係者でも会場には入れない。