パパは何も答えなかった。


ただ、ゆっくりとデスクの
隅に手を伸ばして――
ケースから取り出した、
葉巻に火をつけた。


「ブランデーが飲みたいな。

誰か起きているのがいたら、
言いつけてくれんか」


さっきまでの話なんてもう
忘れたかのように、何気ない
口調でそんな命令をしてくる。


「……何時だと思ってんの。

あたしが持ってくるわよ」


だからあたしも、そっけない
声でそう言って。


パパに背中を向けると、
足早に書斎を後にした……。





     ☆☆☆☆☆


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