「お前はもう大人だ。

仲間と共に、社会の中で
働くことを知った。
本当に夢を追うというのが、
どういうことかも気づいた。

そのうえで、本気で
目指したいと思うことなら、
私は別に止めはせん」


「―――――!!」


さっきから、『パパ』って
呼ぶことしかできなかったけど。


もうあたしは、それすら
ムリになっちゃってた。


口を開いたら同時に涙まで
あふれてきそうで、それを
我慢するのに必死だった。



――心に届いた、パパの言葉が。


あたしの中にあった、
大きくて冷たい氷みたいな
ものを、緩やかに溶かして
いってる。


そして溶けたそれは
あったかい水になって、
あたしの体を満たしてく――
そんな感覚にとらわれる。


この感覚を、どんな言葉で
表せばいいのかはわかんない。


でも、あたしとパパの間に
あったナニカが、今、溶けて
消えてこうとしてる――
それだけは、ハッキリと
わかった。


「――ありがと、パパ」


震える声で。

あたしはようやく、
それだけを伝える。