「イヤ。ここは絶対この
まんまでいきてーんだ。

この、無数に格子が絡まってる
感じがどうしても欲しい」


「そっか……」


爽介がこだわってるのは、
一番下の卵の形をした檻の部分。


絡まる蔦のような格子の
部分は、幅1センチもない
ほどの細さで、ものすごーく
細かい。


それをまず平面状に造って、
多少柔らかいうちにカーブを
つけて、何パーツかを
合わせて球体を構成してく……。


素人が見ても、明らかに
かなりの難易度。


もう、爽介も何度も失敗を
重ねてる。


毎晩毎晩、壊れては
造っての繰り返し。

それでも爽介は、妥協する
気は全くないようだった。


「時期もわりぃんだよな。

これが冬ならもーちょい
どーにかなるんだろうけど」


たしかに。


季節は、もうすぐ8月――
夏真っ盛り。


いくらクーラーをガンガンに
かけて涼しくしてるったって、
冬場ほどじゃない。

チョコも柔らかくなり
やすくて、正直、ピエスを
造るには向いてない季節らしい。