あたしは緩慢な動作で首を
横に振りつつ、


「ううん。
まだ、そんな具体的な
とこまでいってないから」


「あ、そーなんだ?」


「うん。

イロイロ基礎とか出品作品の
規定とかを教えてもらっただけ」


「そっか。

たしかに同じデザインとは
いっても、チョコレート・
ピエスともなると勝手は
違うだろうしね。

そこから始めるのが正解かな」


さすがベテランのマッキー。

ホール係なのに、コンクールの
ことについてもちゃんと
把握してるみたい。


「でも、コンクールのこと
じゃないとしたら、ホント
どうしたの?

まさか――恋の悩みとか?」


――――えっ!?


あたしは思いっきりギクリと
した内心を悟られないように、
ポーカーフェイスをきどる
ので必死だった。


何よこのフェイントの図星は

あいかわらずあなどれないヤツ。


「――何くだらないこと
言ってんのよ。

そんなんじゃないけど……
まぁイロイロあんのよ」