一度は立ち去りかけたが、
再び振り返り爽介はジッと
雫を眺めた。


思うようにならない自分の
憤りを、隠すことなく表して。

本当に、まさに『すがる』
という目で、自分を見ている。


――こんなヤツじゃ
なかったのにな……。


雫が亜莉紗を悪く言う
理由は、わかってる。


こんなふうに言われて、
いい気はしない。

でも……それは、結局は
自分のせいだ。


――いい加減、ケリ
つけるっきゃねーか――。


爽介は静かに決断すると、
雫を目で促して、2人で
通用口から外に出た。

廊下ではさすがに話しにくい。


休憩時間ということで時々は
人が通り掛かるかもしれ
ないが、駐車場の隅まで
来ると、通用口からは距離も
あり、それなりに落ち着いて
話せる気がした。


そこで再び雫と向き合うと、
爽介は言葉を選びながら
ゆっくりと話し出す――。


「お前がオレのことを
気にかけてくれんのは、
ありがたいと思うけどさ。

今回のは――純粋にオレを
心配してくれてるからじゃ
ねーだろ?」