「ムリかどーかなんて、
やってみなきゃわかんねーだろ。

それに、スイーツに関して
素人でもかまわねー。

オレはあいつの独特の
センスを取り入れたいんだ」


「だからって、無謀すぎるわよ!

こんな大きな大会、またと
ないチャンスなのに……」


悔しそうに唇を噛む雫。


それと同時に、爽介の腕に
かかる力が、ほんの少し緩んだ。


爽介はそのタイミングを
逃さず、そっと雫の腕に
反対の手をかけて、握り
込まれていた掌をほどく。


「心配してくれてサンキュー。

でも、だいじょーぶだから」


これ以上話していても、
きっと不毛な会話にしか
ならない。


そう考えた爽介は、雫を
あしらって早くその場を
去ろうとしたけれど、
今日の雫は全く引かなかった。


「待ってよ爽介!

あなた、最近やっぱり
おかしいわよ!

なんでそこまで、あのコに
固執するの??」


「―――は?」


「新メニューのアイデア
くれたコだから?

でも、そんなのたまたまでしょ?

かいかぶりすぎなんじゃ
ないの?」


「雫………」