「コンクールのことでしょ?

あなた――もしかして
ホントに、あの亜莉紗って
コとデザインを考える
つもりなの……?」


「そーだぜ。

昨日、最終的に本人のOK
出たからさ。
今、それを新条さんに
報告してきたんだ」


「最終的にって……」


雫の顔が歪んだ。


昨日、最初に話した時点で
断られてしまったことは、
きっと雫も耳にしているの
だろう。


そして、その数時間後には
パティシエ達は勤務を終えて、
職場を去っている。


それなのに昨日のうちに
話がついているということは、
勤務が終わった後の時間帯で
何かがあったことは、
想像にかたくない。


おそらく爽介が何か別の
アプローチをした――それが
もう、雫には読めている
ようだった。


雫は爽介の腕をつかんだ
手にさらに力を込めると、
すがるような目で問い詰める。


「ホンキなの!?

あのコ、スイーツに
関してはてんで素人なのよ?

そんなのムリに決まってるわ!」