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マネージャールームから
廊下に出て、後ろ手に
パタンとドアを閉じると。


顔を上げるよりも先に、
待ち構えていたような声が
自分の名を呼んだ。


「――爽介!」


声の方向を見ると、ちょうど
外への通用ドアの前辺りに、
思い詰めた表情で雫が
立っている。


「なんだ雫、どーした?」


その顔つきを怪訝に思い
ながら歩み寄ると、待ち
きれない様子で雫も数歩前に
出て、ガシッと爽介の
コック服の腕をつかんだ。


「マネージャーとなんの
話してたの?」


「え? なんのって――」


確かに爽介は今、新条さん
との話を終えて、マネージャー
ルームを出てきたところだ。


運よく今日もこっちに立ち
寄る予定があったよう
なので、休憩時間を待って
さっそく昨日の一件を報告
していたのだが――。


それだけを確認したいに
しては、雫の表情はあまり
にも険しい。


どう答えたものか迷って
いると、雫の方から、
ジレた声音で尋ねてきた。