――爽介、今頃喜んでる
だろうな。


「お前の私物から、桐生が
ヒントを得たらしいな」


―――え?


あたしはハッとしてパパを見た。


「知ってたの?」


なんだ。

それならそう、最初から
言えばいいのに。
相変わらずひねくれてる。


「桐生が、その細やかな
色使いと斬新なデザインが、
ずいぶんいい刺激になったと
話していたよ」


「え………」


爽介がそんなことを?


なんかちょっと、びっくり。


あたしにはそこまでの言い
方はしてなかったけど――
でも、話してる相手が
あたしの父親だなんて知る
わけもないから、お世辞って
こともないはず。


とゆーことは。


それが、爽介の本心――?


なんだか少し、心がざわついた。



「仕事もそれなりに形に
なってきているようじゃないか。

まあ、その調子でがんばれ」


パパはそう言うと、タバコを
手元の大きな灰皿に
押し付けて消した。


2本目を取ろうとはせず、
ゆっくりと背もたれに身を
預ける。


これは、話が終わったって
いう合図。