あたしも、あんまり進んで
なかったキール・ロワイヤルに
口をつけて、しばらくその
沈黙に身をゆだねた。


ユラユラ揺らめく青い光と、
魚の影。

BGMは、サックスが奏でる
懐かしい感じのするジャズ。


海の底での、まるで止まって
しまったかのような、
静かな時間。



なぜだか急に、フッと思い
浮かんだことがあった。


「ねぇ……。
もしかして今日あたしを
誘ったのって。

試作品のデザインのことで、
あたしにお礼言うため……?」


ピクッと、爽介のタンブラーを
持つ指が震えたのを、
あたしは見逃さなかった。


爽介はそのままタンブラーを
コースターに戻して、隣の
あたしを見る。


あたしがジッと見つめるなか、
爽介はほんの少しだけ、頬に
柔らかい笑みを浮かべて――、


「さてな」


と、答えた。


「ふぅん……」


なぁにソレ。


なんて、回りくどくて
分かりづらいお礼。