「ジョーダンじゃないわよ!」



パパのデスクにバン! と
手をついて、あたしはさけんだ。


「パパの会社で働けって、
どーゆーコト!?

なんかの嫌がらせ!!?」


このあたしに、働けなんて。


パパなりの、イヤミだと
しか思えない。


そーよ……あたしがパパの
思うとおりにならないから
って、こんな命令してるんだ。


やり方セコすぎだっつーの。


「そんなの、ゼッタイきかない。

お断りよ!」


あたしはそう言い捨てて、
さっさと部屋を出ていこうとした。


「亜莉紗(ありさ)、待ちなさい」


重苦しい声でパパが呼び止める。



――神月 亜莉紗
(かんづき・ありさ)。

それがあたしの名前。


数ヶ月前に、20歳になったとこ。


ちなみに、その20歳の
バースデイは、パリで迎えた。


ちょっと前まで留学してて
――つまりあたしは、
日本に帰国したばかりの、
帰国子女ってこと。