「甘い！！あんたのそういう所、あたしスッゲーむかつくんだよね！」


ヒロの家。
いつも通りに譜面だらけの部屋に今日はあたし、ヒロ、西、そしてユキというちょっと変則的なメンバーがいる。
あたしがヒロの家に行こうと思った時にユキから電話がきて、「行く」と言ったから連れてきたというわけだ。


ユキはあたしがりっちゃんを許した事に腹が立っているようだ。
ビールを飲むペースも中学生か？と疑うほど早い。


「いやさ、別に許したわけじゃないよ？」

あたしが言うと、頭をバコっと叩かれた。

「何で！？あいつらが今までうららにしてきた事考えたらどうでもいいじゃん」

西は我関せずの姿勢でポテチを食べている。
ヒロは時々チラ見する程度で譜面とにらめっこ。


「あんたらもさ、何かないの？むかつかない？この女！」

ユキの声に「うるせーよ」とヒロが耳をふさいだ。
そして、ため息をついてベースをスタンドに立てかけた。

「オレだってどうかと思うけどな、うららがそうしたいんならいいんじゃね？」

「あたしはさ･･･、心配してさ･･･、うらら自殺するんじゃないかって、ずっと心配してたんだよ？」

ユキは今度はポロポロと泣き始めた。



自殺････。
実はあたしはイジメが始まってそんなにたたない頃、本気で死のうかと思った。
そんなに「死ね」って言うなら望みどおり死んでもいいかなって。
それで遺書を書いた。家族、ユキ、そしてヒロに。
その事はヒロにも言っていない。



「でも、お前らだって何も助けてやらなかったろ？」

西がまた得意のボソっと発言をした。
ユキがキっと西を睨んだ。

「したよ！うちらであいつらまとめてシメてやろうとしたんだから！」


あたしの小学校の友達は７割見事にヤンキー女になってしまって、あたしがそういう目に遭ってると知った途端「殺すか」何て言い出した。
それはやめてもらったんだけど･･･。



「だーから、お前のそういうのがダメなんだよ、うららには」

ヒロがタバコに火を点けながら言った。