ひと夏の経験





引っ越し当日。



「これで荷物は全部?」




とお兄ちゃんが最後の荷物をトラックに詰めた。



「お兄ちゃん、運転してやるから早く乗れ」


お母さんと私と一輝はお兄ちゃんの車に乗った。
車が動きだす。





愛菜から結局返事はなかった。

でもふと、ミラーをみた時、




「愛菜…!」




愛菜が後ろから走ってくる。
車を追いかけながら、何か言ってる。





でも聞こうとするのはやめた。




「止まろうか?」