私立!皇奏大学探偵サークル事件簿2―君の呼ぶ声―

<side伶>



何かを得るには、何かを犠牲にしなくてはいけない。


そんな事を、昔祖母から聞いたことがあった。


彼女が何を犠牲にして、何を得たのかなんて俺には興味がなかったし、結局なにも知らない。


でも、そう俺に言ったとき、祖母はとても幸せそうな顔をしていた。


なんとも悲壮感漂うセリフに、その表情は何故か合っていた、と覚えている。


今なら、多分わかる。


「信じられない…」




こいつは馬鹿なのか。いや、馬鹿なのだった。ぬかった。



俺の肩に寄りかかって、呑気に寝息をたてている馬鹿へ、どういう仕打ちをしてやろうかと考えたが、やめた。


きっかけは珀仙和人と話に熱中するうちに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい神野が俺へと寄りかかってきた。


都合が悪いことに、俺と神野は持ち込んだ2人がけのソファに移動していて、これも持ち込んだテーブルを挟んでむかいにデスクに備え付けの椅子にすわった珀仙和人といった感じだったため、目の前の珀仙和人からの視線が痛い。


でも、少しの幸福感がある。