俺は佐藤さんから目をそらした。



「ムカつくんですよ。」



一言だけそうつぶやく。すると、佐藤さんは面白そうにくつくつと笑った。


何が面白い。というセリフを言うのがこの場面におけるセオリーだが、何が面白いかなんて、わかり切っているから言わない。


なんて子供染みた真似をしているのか。


自分でわかっているのだ。



「いやー、あんたからそんな青臭いセリフ聞けるなんて思わなかったわ。人生達観してるっていったってあんたもまだまだ19の少年だったってことね。」


「…からかうなら部屋から出てください。」



言ってしまってからなんだが、なかなか恥ずかしい。自分でも笑いたいくらいだ。


「まぁ、期限直してさっさと元に戻らないと、かっさらわれちゃうわよー?」


「あなたに言われたくないですね。」



ぴきっという音が佐藤さんの頭から聞こえた気がしたが聞こえないふりをした。


とたんに佐藤さんの方が機嫌が悪くなる。


まったく、何だかんだ言って、佐藤さんだって単純なのではないか。


ほぼ八つ当たり気味にそんなことを思いながら、佐藤さんを部屋から叩き出した。


そのついでに、自分も部屋を出る。