「それで?まさかわざわざ小言を言いに俺の部屋に来たわけじゃないでしょう?」
わざとらしく話題を変えた。
佐藤さんは一瞬目を細めて真理を見極めようとしたみたいだが、そうそうに諦めた。
幼少期より極めたこのポーカーフェイスはそう簡単に見破られないように作りこんである。
「私たちが見つけたあの子、死因は出血多量によるショック死だった。」
「また、悪趣味な殺し方ですね。」
「悪趣味も悪趣味。器用に大動脈やその他の即死ポイントをはずしてナイフで切りつけてある。まるで痛めつけて遊んでいたかのようにね。」
「ですが、佐野和人の部屋には血痕らしきものは見受けられませんでしたね。」
「そう。ということは、」
「彼女はどこか別の場所で殺された、と考えるのが妥当でしょうね。」
「わかっているじゃない。それともうひとつ。彼女の爪に人間の皮膚片が残ってたのね。残念ながら前科者リストには一致する人間はいなかったんだけど。」
そこで佐藤さんは話をいったん切って真剣な顔をした。
「DNAから考えると、どうもその皮膚片は男のものらしいのよね…」


