私立!皇奏大学探偵サークル事件簿2―君の呼ぶ声―


<side 伶>

何だろう。このイライラは。

無性に腹が立つ。



「体のあちこちにかすり傷はあるけどまぁ、問題なさそうね。」


「そうですか。有難うございます。」



信頼できる腕を持ち、すぐに動かせ、口の堅い医者なんてそうそういるはずも無く、結局俺は佐藤さんを呼びつけた。


あとから皆川さんたちも呼ぶ必要もあるだろうが今はいい。


佐藤さんはいやな顔をしながらも診察をし、その経過を報告しに俺の部屋に来ている。


神野は佐野和人と一緒だ。




「気に食わないって、顔に書いてるわよ。」


「だとしたらあなたの目は相当な節穴ですね。」




部屋の主である俺よりも偉そうな態度。

佐藤さんは昔からそういう態度だったから今更咎めもしない。

もっとも、俺だって人のことが言えない程度には偉そうだ。人のことは言えない。



そんな佐藤さんは面白そうに俺を見つめて…いや、観察していた。




「そんなに深青ちゃんが大事なら、ほかのところにやらなきゃいいのに。」


「…それができれば、最初から苦労はしませんよ。」


「あんた、めんどくさい男だったのね。」




一瞬、殺意がわいたが黙っておいた。


自分で一番解っているのだから。


そう、わかっているのだ。


自分が面倒くさい男だなんて。神野に会ったときから。解っていた。