幾千の時を超えて

「――疲れた? もうすぐ家に着くからね」

「いえ、大丈夫です」


新しい母親――吉乃さんの声で目が覚める。


今さっきまでの沙智子との邂逅の余韻で少し頭がふらついた。

最後の言葉、もうすぐ会えるって……?

これから行く新しい家の近辺にあれがいるということだろうか……。



今、私達は新しい父親――亮さんが運転する車で彼らの住まいに向かっていた。

無事葬儀を執り行い、今朝荷物の整理とアパートの引き払いを済ませてきたところだった。

葬儀に関しては、何度も彼らが告別式をしないかと問いかけてきたが、否で通した。

彼女の意思はなるべく尊重したかったし、彼女は派手なことが嫌いだったから。


彼らは渋い顔をしていたが、弁で説き伏せるのは得意だから、無理やり納得させた。

頭の固い大臣相手ではないので、簡単なことだ。

政(まつりごと)の閣議会議で慣れている私にとっては遥かに易い――。