今年もあの木は桜をまとう

この道を
毎日通るようになったのは約2年前
2度目の春が来る
今回はどんなおもしろいエピソードを
持って来るんだろう

苦しくて悲しくて
今にも涙が出てきそうな時に
君は私の目の前で咲き誇った
とても繊細なディテールを
いつもは見逃してしまうけど
こんなに心が空っぽな状態の時
視覚は
おしべのひとつひとつを
見せてくれる

夕焼けによって
花びらが透き通る時の気持ち
去年と全く同じだって気付いた
なんだか心地よい
気持ちのよくなる感触
曇っていた胸のあたりに
太陽が射してくるような

右の空には陽によって染まった
ひとかたまりの雲が
はっきりとグラデーションを
作っている利口者
中途半端じゃない
桜と一緒

自然って
どんなに素敵な存在なのか
私達にとって
どれだけかけがえのない存在なのか
私達をここへと
導いてくれた手の持ち主
その大切さは
言葉にできない程大きい

君はそんな事を
今日
私に物語ってくれた
唯一の命の欠片

欠片と言うのは失礼かもしれない
やっぱりあえて言うのなら
『結晶』