階段を降りながら、おばあちゃんが先輩に話しかけた。

「ご迷惑をおかけいたしました。」

「いえ、そんなことはないです。」

「でも、あなたに助けられたからよかったようなものの。咄嗟のことで…」

「その事は彼女には黙っていて下さい。頼みますよ。」

「承知しております。」

「ではまた。」

「お気をつけて。」

おばあちゃんは、先輩が出ていった後もしばらく頭を下げ続けた。



その頃奏美はべッドの上で考えていた。

(私また助かった…)

以前も自転車の突進が直前に回避されるということがあった。

あの時も先輩と一緒だったんだ。

(だけど…)

これ以上考えたくない。

奏美は毛布を被り目を閉じた。