でも目の前の先輩は、倒れていない。

「この紅茶美味しいですね。」

先輩がにこやかに笑っている。

「男の人だから、甘くしなかったけど大丈夫だったかね?」

「ええ、香りもいいし、本当に美味しいですよ。」

「奏美の分は疲れてるだろうから蜂蜜を入れておいたよ。」

おばあちゃんはウインクした。

なんだ…先輩のはただの紅茶だったんだ。

私のに入っているハニーティーの匂いで騙された。

安心して奏美は一口飲んだ。

「この人がね、奏美が倒れたって言って家まで連れてきてくれたんだよ。」

おばあちゃんが説明してくれた。

「私倒れたの?」

「電話を切った時、相葉さんが見えたんだ。そしたら急に倒れちゃってびっくりしたよ。」

「うそ?!」

あの時、奏美は道路を横断しようとして、バイクが走ってきて…

そこで記憶が途切れていた。