陽が落ちるのが早い。

さっきまでは足元に影を落としていたのに、その影はもう闇に紛れてしまっている。

「暗くなってしまったね。」

「ホント早いですね…。」

「寒くない?」

「少しだけ…。」

まだ手袋には早かったので、奏美は両手をこすり合わせてハァーっと息を吹きかけた…つもりだった。

が、かかったのは左手だけ。

右手は…?

暖かい…


先輩が素早くつかみ、コートのポケットに入れていた。

「え?」

「少しは暖かいかな?」

全身の血液が沸騰するくらい熱くなった。